空间叙事视角下冲绳人的身份建构困境——以长堂英吉的《海鸣》为中心（空間論からみた沖縄人のアイデンティティ確立の苦境――長堂英吉の『海鳴り』を中心に）文献综述

文献综述

文 献 综 述　『海鳴り』は作者の長堂英吉が主宰する同人雑『南濤文学』（一九八八年夏季号）に掲載された後、二〇〇一年に発行された歴史小説短編集である。

書簡の書き手である真鶴の夫―宗森が巻き込まれてしまうのが、一九一〇年に沖縄本島北部で起こった「本部徴兵署暴動事件（本部騒動）」である。

徴兵令の施行により兵役を負うことになったことは、沖縄の人々が、ますます近代国家「日本」というシステムあるいは「日本人」という範疇に組み込まれていったことを意味する。

しかし、一般の民衆の間には、故意に体を傷つけたり、あるいは検査前に逃亡したりする者もできた。

徴兵忌避のために捕らえられて処罰されたという。

また、多くの移民を送り出した沖縄では、経済的理由だけでなく徴兵忌避のために合法的に海外移民を希望した人々が多くいたともいわれている。

　『海鳴り』で描かれているのは、そうした近代沖縄の一般民衆の情念的な思いである。

作品には、清国福建省にあった琉球館に逃亡した夫を支え、そして最後は夫の人差し指を切り落とすという激しい執念で徴兵忌避を貫かせた、時代に翻弄されながらも、強く生き抜いた語り手真鶴の、何事にも収斂されようとしないしたたかさで、しなやかな「生」が綿密に描かれている。

　本稿は空間論とアイデンティティー理論に基づき、『海鳴り』のテキスト分析の方法を用いて、「琉球処分」の過程を経て沖縄民衆のアイデンティティーの形成に影響した要因を探究する。